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次の日も
その次の日も。
男の子はいた。
一度だけ、2人で一緒に柵の向こう側へと立った。
これで、一思いに。
そう思っている私に、男の子が言った。
「……今日、アニメの声優さんの実況動画があったのに録画してない」
青ざめながら呟かれた言葉を聞いて、飛び降りれるわけなんかなかった。
だって、私も録画していなかったから。
そんな日々を繰り返しているうちに、私は学んだ。
一人で居れば、趣味の絵描きやテスト勉強がもくもくと出来るし慣れてくると人の視線も怖くない。
次第に私は存在が薄くなって、一人でいることが怖くなくなった。
相変わらず屋上に行くのが日課だったけど、最初に抱いていた死への恐怖なんてどっかいっちゃってて。
趣味とかアニメとか好みとかが全く同じ別のクラスの男子と日が暮れるまで喋るのが楽しみになっていた。
向こうも同じだと思っていた。
けれど。
ある日、柵の向こう側に男の子が一人で立っていた。
いつもと違う雰囲気に呆気に取られている私の存在に気づいた彼は、振り向いた。
顔のあちこちに痣やらこぶやらが出来ていて、私は一瞬息が出来なくなった。
無視は、マシだった。
心の底からそう思えるほど、酷い状態だった。
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