年上の女

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それぞれの自己紹介も終わり、周りがなんとなく近くにいる者同士で話を始めたので、俺は目の前の彼女と話をする事にした。 彼女の名前は「サヤ」で、職業は新宿駅近くの高層ビルで働く受付嬢。 そして隣のゆるふわ系の「ユウナ」とは、高校からの友達らしい。 それ以外の事は、正直うろ覚えだ。 「受付の仕事って大変ですか?」 どうしてさっき、俺に何か言いたそうな視線を投げ掛けていたのかなんていう疑問はさておき、俺は適当にそんな質問をした。 「あ…大変な事もあるけど、人と話すのは好きなので………企画系のお仕事は、どうですか?」 彼女は苦笑いを零しながらそう言って、それから間を持たせる様に自分のグラスのカクテルを一口飲んだ。 「あー、まあ大変ですけど、割と自由にやってますね。アイデアに詰まった時は仕事中に同僚とカフェ行ったりとか」 「……そうなんですね…」 彼女はまた、不器用に笑った。 まるで指で触れたら消えてしまいそうな、その頼りない笑顔に何処か違和感を感じる。 受付嬢ってもっとこう、いかにも「私達は会社の顔です」って言わんばかりの、自信に溢れた笑顔の女が多いイメージだったけど…… 「……もしかして、人と話すのは好きと見せかけた人見知りだったりします?」 「……え?」 「こういう飲み会って本当は苦手だけど、なんとか頑張って来たのかなって」
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