年上の女

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蒸し暑い夏の夕方の東京は、何処もかしこも通り沿いは人で溢れていた。 「クライアント先から行くから少し遅くなる」とメッセージを送っていた俺は打ち合わせが終わった後、タクシーで飲み会の会場になっている店へ向かった。 時刻は19:35を指している。 タクシー運転手に支払いを済ませた後、地下へと続く階段を降りて「Le monde」(ル・モンド)という名前のお店に入った。 「いらっしゃいませ」 黒いシャツを着た男の店員が出迎えた。 「予約してた佐伯(さえき)です」 佐伯というのは、三澤の大学時代の例のノートの友達の名前らしい。 「あ、はい……お待ちしておりました」 店員はレジ前に置いてあった帳簿を確認して、俺を店の中へと案内した。 狭く薄暗い廊下を歩きながら、時々男女の笑い声が聞こえて来る。 俺がこれから向かうテーブルから聞こえるものなのか、それとも全く別のテーブルのものなのかは分からないけど。 「こちらです」 「あ、どうも」 店員に通された個室には、6人掛けのテーブル席に男2人と女3人が座っていた。
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