「コアラの意思なの」

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「コアラの意思なの」

  「親睦は深められた? 」 「はあ? コアラと? 」 母の言葉に縁側の向こうの庭を見る。 父とコアラが楽しそうに戯れている。 「やっぱり難しいのかしらね」 「噛み付かれるわけじゃないから別にいいよ。  アイツにとっては私が新入りなんだし」 そう、コアラにとって私は新入りだ。 剣崎(けんざき)真桜(まお)、28歳。 大学進学と同時に山梨の実家から東京に出て10年、 この度、実家に出戻ってきたわけだけど、4年前、両親は知らぬ間に犬を飼い始めていた。 年に一度のペースで顔を合わせてはいたけれど、それだけじゃ家族として認識されなかったのだろう。 「結局、どこから来たんだろう」 頬杖をついて呟いた私に、母はお茶をさしながらニコニコして言った。 「もうそれはいいのよ、  うちの子になったのはコアラの意思なの」
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