7人が本棚に入れています
本棚に追加
「どうかね」
またも男の声がして、僕と猫だけの世界は終わる。
「猫って、いいですね」
僕がぽつりと零した言葉を聞いて、男は嬉しそうに目を細めた。
「こっちは、どうかね」そう言うとほかの写真をポケットから取り出すと、テーブルの真ん中に置いた。真っ黒な猫の写真だった。
真夜中に浮び上がる満月のような瞳が僕を捕え、再び僕と猫の世界が展開する。
「これはまだ、誰の猫でもない」
男の言葉を耳の端に掠め、僕はひとりと一匹の世界に深く潜り込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!