吾輩の猫である

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「どうかね」 またも男の声がして、僕と猫だけの世界は終わる。 「猫って、いいですね」 僕がぽつりと零した言葉を聞いて、男は嬉しそうに目を細めた。 「こっちは、どうかね」そう言うとほかの写真をポケットから取り出すと、テーブルの真ん中に置いた。真っ黒な猫の写真だった。 真夜中に浮び上がる満月のような瞳が僕を捕え、再び僕と猫の世界が展開する。 「これはまだ、誰の猫でもない」  男の言葉を耳の端に掠め、僕はひとりと一匹の世界に深く潜り込んだ。
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