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140文字SS 21-30
-21- * * *
王様がお触れを出した。
「金の小鳥を捕まえた者に褒賞を」
王宮で飼われている小鳥が逃げ出したそうだ。
「またですか」
うちの店主が腰を上げた。
逃げ込む先は決まって、国境近くの小さな庵なのだとか。
「そこへ行く"ついでに"厄介な侵入者を排除しろって事でして」
……店主の本業は、暗殺者。
-22- * * *
手を出せば、別れが来るとわかっていて。
君のぬくもりを欲しがった。
ごめん。僕の我儘だ。
……でも。
君だって、いつか捨てられることはわかっていたよね?
わかっていて、その身を差し出してくれた。命を尽くして。
ありがとう。
この感謝はきっと、僕の寿命が尽きるまで。
―――『筋金入りの冷え性から使い捨てカイロへの謝辞』
-23- * * *
朝起きると、自分の足元より下の方から小鳥のさえずりが聞こえる。
この塔に来てから知ったこと。
雨の日はほとんど音がしない。
周りの屋根や地上にぶつかる水滴の音は、ここまで届かない。
代わりに、風の音は天と地の間にごうごうと轟く。
天上の神々に、人の声など届かないのは当然なのだ。
-24- * * *
私の主は、よろしくない霊をやたらと引き寄せる。
本人には自覚もないし意図もない。見えてすらいない。
だからこっそり、私が頂く。灯火に惹かれて集まる虫を、暗がりから狙うように。影の中へ引きずり込んで、ぺろりと丸のみ。
主は今日も笑顔で過ごし、私も笑みを返している。
-25- * * *
家の庭には、使われない扉がひとつある。
開けてもその向こうはブロック塀で、どこにも繋がってはいないのだ。
しかし母は「これ素敵でしょ? ひょっとしたらどこかに行けるんじゃないかってワクワクしない?」とお気に入りだ。
お洒落な佇まいの扉一枚。我が家の片隅には『夢』がある。
-26- * * *
天国も地獄もなかった。神も悪魔もいなかった。
肉体を離れ、魂になった私を『それ』は捕えた。幸せに生きた者、恨みを抱えて生きた者、それぞれの質を計って等級がつけられる。
「私『いい子』だったのに…」
現世は魂という家畜を育てる農場だった。
生き方なんて、誰も見てはいなかったのだ。
-27- * * *
実家の倉で、手が滑って箱を落とした。
中の絵皿が割れ、着物姿の女が現れる。
「この家の者だな」
どうやら妖を封じてあった様子。
昔、ご先祖を婿にするつもりだったらしいが、俺で手を打つことにすると。
異界の屋敷で主人に据えられた。
まあ、借金取りから逃げられるなら、こっちの方がマシだ。
-28- * * *
星の引力にも、ラジオの周波数みたいなのがあってね。
この船はその力を使って進むんだ。
…ああ、星索盤をそんなにいじっちゃいけない。
磁気圏対流に巻き込まれたら、抜け出すのが大変なんだ。
航界は慎重に、安全に。
-29- * * *
「私は水神様にお仕えしておりますの」
寝具の中で女は語る。
「村では大事にされました。けして飢えることなく、常に守られて。
いずれは水神様の元へ行くのだと、教えられておりました」
その村が凶作に見舞われた年、彼女はここへ来た。
全ては見目の良い子を無事高値で遊郭へ売るための、方便だったのだ。
-30- * * *
私が異世界に召喚されたのと同時に、こちらからあちらへ召喚された子がいたらしい。
何その等価交換? むしろ交換留学的な?
そこそこ幸せに暮らしている私の元へ、やはり同意も何もなく飛ばされた少女からの声が届く。
『何なのよこの世界! でたらめすぎる! 地獄!』
……うん、なんかごめん。
* * *
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