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140文字SS 81-90
-81- * * *
マンホールの蓋が開いてたんだ。夜道で気づくのが遅れた。
落ちた、と思って次に目覚めた時は魔界にいた。しかも人間側の斥候かなんかと勘違いされて捕えられて。
拷問か死刑か、という中でとっさに「お痒いところはありませんか!」と叫んだ。俺はトリマーです。あなたの毛並みを整えます。
獣人の王が、ピクリと反応した。
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「おお、その瞼を閉じてくださりませ、お願いでござります」
一瞥しただけで震えあがる山妖たち。ここはどこだ。お前たちはなんだ。
「その眼差しは、我らには強すぎまする。どうぞお目をお隠しくだされ」
怯える小さな手で、粗く漉いた和紙を面のように着けられた。
「この山の神が、捧げられた娘の身に宿られたのが貴女様です」
そうだ、たしか……村長の娘の代わりに。
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彼女の前世はセイレーンでね。
幼い頃は自覚がなくて、友達と無邪気に楽しい歌を歌っていたんだ。
年頃になってラブソングを口にすると、ストーカーは生まれるわ女子にはハブられるわで苦労して、歌わなくなった。
でも最近はいいね。
Vなんとかってやつで、正体隠してネットの海で歌っているよ。
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彼の瞳は、魔のものを視る時、片方の色が赤く変わる。
そして『力』を発動させる時、もう片方の瞳が青くなる。
「ニンテンドースイッチみたい」
「僕の瞳をゲームコントローラー扱いしないでくれる?」
今の子供はちっとも僕を怖がらない、と唇を尖らせる。
彼は、いったいいくつなんだろう。
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人の心の声が聞こえる力を、一日だけもらった。
後輩女子は先輩から指導を受けている間中、ずっと心にヘビメタが流れている。
パートさんは一日中、朝の幼児番組の歌がループしている。
先輩女子はゲームキャラと会話し、係長は皆の仕事ぶりを実況中。
……うち、こんな職場だったんだなー。
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通常、蛇口からは水が出る。
場合によりお湯、ところによりジュースやお酒が出ることも。
本日は、同居人が古い映画を見て叫んでいた。
「蛇口から! 血が! あんなに!」
ああ、ホラーでそういうのあるよね。
「なんてもったいない!」
うん、吸血鬼が見るとそうなるか。
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部活の合宿で百物語をやったことがある、と友人は言った。
「先輩達がめっちゃ気合い入れてさあ……」
地元の怖い話を調べてきたり、演出にも余念がなかったそう。
「しかも誰かが一つ話し終えると、用意してた百足の足を一本ちぎるの」
その後、先輩の側で妙に百足を見るようになったという。
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来世に期待しよう。
そう思って、終わりにした。ハズだった。
「よう、お早いお帰りだったな」
出迎えてくれたのは、あの世の門番。
……そうだ、俺はこの仕事にうんざりして、下界に下りたんだった。
うまくすれば、100年は離れていられると思って。
この何千年と変わらずに続く、終わらない生から――
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異世界に来てしまった。
華やかなビル、賑やかな街。活気ある人々の表情。
私を拾ってくれた人からこの社会について教えてもらう。
就職するには、義務教育を受けていればOK。
高校や大学は、自分の好きなタイミングで入れる。
仕事は週休3日。などなど。
すっかり廃れた祖国と、地名だけが同じ…。
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タイムリープ能力を使って幾度も戦いを試みる。
だが何度やっても勝てない。
「なぜだ!『いつでもどこでも俺達好みのエロ絵を見られる世の中に表現自由党』はどうして『表現の自由は認めるがTPO考えろ党』に勝てないんだ!」
そしてまた繰り返す。
相手の言葉に一度も耳を傾けることなく。
* * *
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