かなみの話

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久しぶりの転校生とあって 休み時間に松永君の回りには人だかりが出来た。 『前に()ったとこは電車が1時間に1本やて。 こっちの駅でえらい驚いたわ。』 『1時間に1本って!それ日本?』 『あ、馬鹿にしちょったな?』 ケラケラと笑い声が上がった。 すごい……もう馴染んでる…… ただただ、驚きだった。 『かな。』 その一声で、私の心臓は縮こまる。 『俺の辞書電池切れちゃった。かなの貸して。』 拒否権はない。 黙って電子辞書を渡した。 予習はしてあるし……まぁいいや…。 辞書を受けとるとき、気のせいかも知れないけど れんは松永君を一瞥した。 チャイムが鳴って、人だかりはサッと消えた。 『今のえっらい男前やったなぁ? 本田さんの彼氏?』 松永君の声は訛りがあるし、良く通る。 私は全力で首を横に振りまくった。 変な誤解させたら、れんが怒る。 『そーけ?でも…』 私は急いでノートを破いて 「あの人は貴島蓮」 「おさななじみ」 『なんだ。彼氏と違うんか。』 うん。と頷いた。 やっぱり声がよく通っちゃってるし… 『そんなら、良かったわ。』 『?』 『あんな男前がライバルは正直キツイやん。』 ライバル? 『わし、本田さん好きになると思うんやけど。 ええよね?』 『………………!?』 『ま、駄目って言っても聞いてやらんけど。』 クスッと笑われた。
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