かなみの話

12/12
70人が本棚に入れています
本棚に追加
/53ページ
…………は。 うわ。ちょっとだけと思ったけど… 今……何時…… 『起きた?』 『……ッ!』 声だけで、息苦しい。 『辞書、返しに来たんだけど。 かな、寝てるから。勝手に待ってた。』 れんはベッドに座って、にっこりと笑っていた。 なんか変。れんが他の人に見せる時みたいな笑顔… こわい… 『ねぇ、かな。』 あっ! れんの手には、私の教科書があった。 そして、落書きのページをビリビリと破っていた。 返して!! 『おっと。勝手に取ろうとするなんて。 かなの癖に生意気だなぁ。』 逆に手首を掴まれて、ベッドに押さえつけられてしまった。 『教科書(これ)がそんなに大事?』 もう片方の手を教科書に伸ばした。 『答えろよッ』 イラついたれんは、教科書をドアに投げつけた。 そして空いていた手首も掴まれてしまった。 『仲良く筆談か。やっぱりかなは男好き?』 首を横に振った。 『あの転校生、かなの事好きとか言ってたよね。 もしかして本気にしちゃったの?』 もう一度首を横に振る。 冗談に決まってる。 私なんか……好きになってくれるわけ…… 『………ッひっく………ヒッ………』 『かな………』 勘違いなんかしない…勘違いなんか… 泣きながら、首を横に振り続けた。 『………帰る。』 掴まれていた手が離れて れんはベッドを降りて、部屋から出ていった。 掴まれていた手首は、うっすら赤くなっていた。
/53ページ

最初のコメントを投稿しよう!