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『悪いわねー。本田さん、手伝って貰っちゃって。』
ふるふると首を横に振った。
『じゃあ、先生ちょっと会議に行ってくるから
終わったらそれは教卓の上に置いて帰っていいからね?』
頷くと、先生は『ありがとう!ほんと助かる!』
と言って教室から出ていった。
窓の外はもうポツポツと雨が降り始めていた。
傘……忘れちゃったんだよなぁ…
本降りになる前に終わらせて帰らないと…
パチパチと紙を束ねてホチキスを打っていると
『相変わらず、言いように使われてるんだな。』
帰ったと思ってたれんが、教室に入ってきた。
そして、私の前の席に来ると
椅子を反対に向かせて、私と向かい合わせに座り
手際良く冊子を作っていく。
『ホチキス貸して。俺がやった方が早い。』
言われるがまま、ホチキスを手渡した。
なので、私は紙を並べる係になった。
無言で資料を作った。
最初は緊張してたけど、資料作成が終わりに近付くと
なんだかあっという間だった様な気がする。
『あの日もさ……』
不意に、れんが口を開いた。
『かなを置いて帰らなきゃ良かったって
今でも思う。』
私は紙を並べる手を止めた。
れんが泣いていたからだ。
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