かなみの話

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夕方。 ベッドでうつらうつらと本を読んでるとインターホンが鳴る音がした。 だれか来た。 そしてすぐに。 『かなみー!れん君よ! 降りてきなさーい!!』 仕方なく本にしおりを挟んで、部屋を出た。 れんはブランドものの袋を持ってリビングに居た。 『れん君、ワンピース汚した叶美を心配して わざわざお洋服を買ってきてくれたんだって!』 お母さんが興奮気味にジュースをテーブルに置いた。 『はい。かな。』 綺麗な笑顔。 モデル業のれんのお母さんに似てる。 整った顔。 おずおずと袋に手を伸ばした。 『見てみなさいよ!叶美!』 私より、お母さんの方が興味津々。 紙袋の中には、あのかわいい白いワンピースとは真逆の 黒いワンピースだった。 白いワンピースがノースリーブ型だったのに対して この黒いワンピースはしっかり襟がついていて 肩から腕は長袖だけと透ける素材のパフスリーブ。 スカートの丈も膝少し上くらい。 ブランドはよく知らないけど 多分、あの白いワンピースがたぶん5着は買えそうな代物だ。 『すごい……素敵だけど…… いいの?れん君。こんな高そうなものを……』 『父の友人がデザインしたものなので。 友達にあげるって言ったらタダでくれたんです。だから気にしないで下さい。』 『さすが有名ブランドの社長さんねぇ…』 『かな、気に入った?』 ニコニコと、よそいきの笑顔で れんがこっちを見た。 『叶美、せっかくだから着てみなさいよ! お母さんは志穂さんにお礼の電話しなくちゃ!』 私は小さく頷いて ワンピースを抱えて部屋に戻った。
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