かなみの話

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『夏休みは充実してましたかー? 宿題を最後にやっつけた人はどれくらいかしら?』 こんがり小麦色に焼けた肌をした担任の先生がニコニコと教室を見渡した。 生徒もみんな日焼けしている。 楽しかった夏休みを物語る様に。 私と、れん以外は。 元々出不精な私は病人の様に肌が白い。 れんはモデルの仕事も少なからずしてるので あまり日焼けをしない様にしてる。 『そして新学期から、このクラスには新しいお友達が増えます! はい、松永君。入ってきて!』 みんなの視線が一気に扉の方へ。 入って来たのは、背の高い男の子だった。 さらさらの黒髪で色白。 そして 姿勢がいいと思った。 『自己紹介出来るかしら?』 『はい。』 慣れた様子で黒板に名前を書いて 『松永(まつなが)(けい)です。 昔、ちょっとだけこっちに住んでた事あるんやけど… 知ってる顔は……無いやな。 ま、田舎もんなんで、色々迷惑かけると思うけど よろしくお願いします。』 にっこりと笑って言った。 確かに、ちょっとアクセントが違う。 けど……堂々としてるなぁ。 『席は、みんな予想してた通り 本田さんの隣の机ねー。』 そう。朝来たときから気付いてた。 今までなかった机が隣にあるから。 『本田さん、手上げてー。』 先生に言われて、おずおずと手を上げた。 『松永君、あの子の隣ね。 わからないことは本田さんに聞いてね。』 『はい。』 松永君がゆっくり歩いてくる。 そして、隣に座った。 『よろしゅうの。本田さん。』 『………………。』 私は目を合わせないように、小さく頷いた。 私なんかが隣で…ごめんなさい。
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