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それであたふたしている内に娘たちの会話が明瞭に聞き取れる位になると、浮きを見る目の視点まで定まらなくなって来た。
「あっ、そうか」
「そうだ、釣りしてんのよ」
「えっ、なあんだ、釣りか」
声はいよいよ近づいて来て男のすぐそばまで来ると、男は声からしてほんの餓鬼じゃないかと強いて見縊って頓着しないように振り向きもせず片方の手で頬杖をついていた。
そこへ一人の娘が突然、「釣れますか?」と若年らしい可愛らしさを伴った媚びた体で問いかけて来た。
男は少しばかり狼狽えたが、堅い体をひねって振り向くと、上目遣いで娘を見た。
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