釣り

4/6
前へ
/6ページ
次へ
 男は娘らに励まされもして気を良くしながら釣り糸を再び垂らし、今度こそ良い所を見せようと意気込んだ。  しかし、意気込んでばかりではいけないと気づいて冷静に臨まなければと思うに至ると、浮きが少し下がった。そして更に早く下がったところでアタリだと思って釣り竿を引っ張り上げてみると、釣り針が見事に口に食い込んだらしく魚を釣り上げることに成功した。  そうなれば、娘らは調子が良いものでキャッキャキャッキャと騒いだりパチパチパチと拍手したりして喜んだ。  男も表情がほころび、脂下がる始末だ。  釣り上げられた魚はと言うと、太陽の光を浴びた鱗をキラキラと輝かせてはいたものの目玉は墨汁のように黒く濁っていた。  男は手慣れた手さばきで魚の口から釣り針を上手に抜いてやって魚を魚網の中に入れた。  そこへ娘たちが寄って来て、すごいすごいなぞと言って戯れだした。その内の一番背が高い娘が男に聞いて来た。 「これ、どうするんですか?」
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加