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「だからウチは名目上は『プライベートの相手』と言っているんだ。表立って『夜のお相手』を派遣しているとは言えないだろう?」
一理あるので、思わず黙ってしまう。
「ウチにはそれなりに権力もある。うるさいところや、おしゃべりなところを黙らせることができるぐらいは、ね。だからゆっくりとプライベートを堪能したい人にとって、大事な会社なんだよ」
…まあ性欲って大事、だよな?
オレにはやっぱりよく理解できない。
多分、淡白なんだろうな。
「で? オレが童貞かどうかなんて、どこら辺で関係あるんだよ?」
「それが一番重要なんだ」
「だからどこがっ!」
「仕事内容のことですよ。若様」
梢さんが社長室に戻って来た。
トレーに二つの湯飲みを持って。
テーブルの前で跪くと、オレと親父の前に湯飲みを置いた。
オレはお茶を一口飲んで、気分を鎮める。
「若様が社長になられるには、この会社の仕事全体を知らなければなりません。一番重要なのは、お客様にどのような相手を当てるかです」
「つまり、適材適所というのものだな?」
「その通りです」
梢さんは立ち上がると、にっこり笑った。
「ここは人材派遣会社。人を見極めなければ、お客様のご要望に応えられることもできません。ゆえに若様には人を見る眼を養ってもらいたいのですわ」
「そう! わたしの言いたいことはそれだよ」
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