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「それはホラ、若様の好みが分からなかったから、とりあえず社長とあたし達、秘書連中で良いのを集めてみたの」 オレの好みってこんなに広いと思われているのか…。 今まで付き合ったのはせいぜい歳の差2つまで。 言っておくが、オレはノーマルだっ! ロリ好みとか熟女好きではない! 「で、どお? 好みの娘がいなかったら、別のファイルもあるけど」 そう言ってカバンの中から次々とファイルを取り出す。 「えっと…。断る、という選択肢は?」 「ないわね。だって社長命令だもの」 親父、呪う! オレは渋々ファイルを捲る。 「…でも何でプロフィールとか載っていないんですか? 写真だけって…」 まるで本当に風俗で女性を選ぶようだ。 「まあ擬似風俗体験だとでも思って。それに女性の年齢を知ろうとはしないほうがいいわよ。命が惜しければ」 その言葉にザーッと全身の血が下がった! 梢さん、メガネの奥の目が怖いですっ! 「とっ歳はあんまり気にしないタイプなので…」 「良かった。それで好みはいた?」 「えっと、うんっと」 一生懸命写真を見るも、風俗なんて経験ないし、こんなふうに女性を選んだこともない。 うんうん悩んでいると、梢さんが近寄ってきた。 そしてスッと細い手でオレの頬に触れて、妖艶に微笑んだ。 「それとも…あたしがお相手しましょうか?」 その眼の迫力に、思わず後ずさった! 「けけけ結構ですっ! オレなんてとてもとても!」 首を勢い良く右に左に振り回し、慌ててファイルを見る。 とっとりあえず、誰でも良いから決めないと危険だ! オレ自身が!! ファイルを3回見たところで、とりあえず眼についた女の子の写真を梢さんに見せる。 「あっあの、この女の子なんてどうでしょうか?」 「アラ、良い娘選ぶじゃない」 梢さんはオレからファイルを受け取り、じっくり見た。 「この娘、大人気なのよ。やっぱり若様、見る目あるわね!」 嬉しそうに言って、ケータイ電話をスーツのポケットから取り出した。 「ちょっと待っててね」 オレに背を向け、数歩歩く。 そして電話で話し出した。 …もしかしなくても、すぐにやってくるとか? 電話はすぐに終わった。 「お待たせ。すぐに来るからね」 やっぱりっ! 「まあすぐと言っても、三十分ぐらいかかるから。それまでにシャワーを浴びるなり、心の準備をするなり、好きなことしてて」 そう言って梢さんは片付ける準備を始めた。 「梢さんは?」 「社に戻るわ。若様は今日ここに泊まってもいいから」 茶目っ気たっぷりに笑われても…。 「あと道具とかは寝室に置いてあるから。銀色のカバンの中ね」 「道具?」 「それじゃあ、頑張ってね~」 ヒラヒラと手を振り、梢さんは部屋を出て行ってしまった…。 …マズイぞ、この状況。
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