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初仕事
とりあえず、逃げよう!
オレは梢さんが出て行ってから10分後に、ドアに向かった。しかし…。
「ゲッ! ドアが開かない!」
ガチャガチャとドアノブを回しても、開かなかった。
もしかしなくても…。
<プルルルッ!>
部屋の電話の音に、驚いて飛び上がった。
「うわっ!? って、誰だよ?」
慌てて部屋に戻って受話器を取った。
「はい」
『あっ、若様』
梢さんだった。
『言い忘れていたけど、ドアは廊下側から開けられるけど、部屋の中からは開けられないから』
監禁部屋かっ! ここは!
『だから逃亡なんて考えないようにね。せっかくの初仕事、頑張って』
そう言って、通話終了。
…一方的だ。一方的過ぎる。
しかもオレの考えは見抜かれている。
もしかして閉じ込められたか?と思っていたけれど、大当たりだったみたいだ…。
受話器を置き、がっくり項垂れる。
女の子が来るまであと20分もない。
こうなれば…話し合いでなんとかしよう!
正直、セックスに強い興味はない。
風俗にあえて行こうとも思わない。
そこそこ発散しとけばいいだろうという考えの持ち主なんだ、オレは。
だから強制されるなんて真っ平だ!
逃亡がダメなら、話し合いだ!
そう決めて、オレは女の子を待つことにした。
しかしただ待つのもアレだ。
そう言えば、梢さんが寝室に『道具』を置いたとか言っていたな。
聞く暇なく出て行ったから、詳しく聞けなかった。
オレは奥に続く扉を開けた。
そこは広々とした寝室で、キングサイズのベッドが置いてあった。
さすがロイヤルスイートルーム。
そしてベッドの上に、例の銀色のカバンが置かれてある。
カバンを開けて見て、すぐに閉めた。
そしてベッドの上に倒れこんだ。
「『道具』って…」
カバンの中には、確かに『道具』がたくさん入っていた。
セックスの時に使う『道具』が…いわゆる『大人のおもちゃ』と言われるものがたくさん。
恐る恐るカバンを少し開けて、改めて見た。
…半分ぐらいは見知っているけど、後の半分は使い方すら分からないモノばかりだ。
と言うか、こういうのは一度たりとも使ったことは無い。
…まっ、学生が使う物じゃないしな。
ちょっと興味がわいて、改めて中身を見る。
「ローションに、バイブにローター。…手錠にムチ?」
オレはどんな性癖を持っていると思われているんだ?
AVやマンガで見たことのある道具は分かるんだが、他のはよく分からない。
まあ…アダルトグッズなのは変わらないし、オレは使わない!
カバンを閉じて、オレは元いた部屋に戻った。
ソファーに座り、息を吐く。
壁にかけてある時計を見ると、あと10分。
…時間ってこんなに遅かったか?
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