62人が本棚に入れています
本棚に追加
2
会社の地下駐車場に車を止め、特設エレベーターで最上階に上がる。
外から見たこの会社は、何かこう…でかかった。
高層ビルが建ち並ぶ街中にあって、かなり立派な建物だ。
今日からここで働くと思うと、緊張してきた。
何せオレは親父が何の仕事をしているか、詳しくは知らない。
人材派遣をしているのだと、言われ続けた。
不況の世の中でも、ウチの経済状況は変わらなかったのだから、儲かってはいるのだろう。
ウチの経済レベルはかなり高い。
オレが私立の幼稚園から大学まで行けるぐらいだ。
海外旅行もしょっちゅう行ってたし、ブランド物も家の中にゴロゴロある。
両親には一人息子兼跡継ぎとして、これ以上ないぐらい愛情を注がれた。
もちろん、親父の下で働く社員達にもだ。
オレも期待に応えるべく、勉強にスポーツに人間関係に頑張ってきた。
将来は一つの会社を継ぐんだ。
そこに働く人間、全ての人生を握ることになる。
ハンパな気持ちはいけないと、両親が呆れるぐらい真面目に生きてきた。
それが今、報われる。
これまでの苦労も、大切に思えた。
…今、この瞬間までは。
やがてエレベータの動きが止まった。
「こちらです。若様」
「あっああ」
最初のコメントを投稿しよう!