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フロアに出ると、目の前に大きな木の扉がある。
梢さんはゆっくりとノックする。
「社長、若様をお連れしました」
「ああ、入れ」
聞きなれた親父の声だが、今日は何故か緊張させれる。
背筋を伸ばすと、梢さんがドアノブを押し、扉を開けてくれた。
オレは固唾を飲み込み、中に入った。
「失礼します。しゃっ…」
「待ってたよー!」
がしっ!
「ぐわっ!」
畏まって挨拶をしようとしたが、いきなり親父に抱き付かれた!
「うっとおしいわっ! クソ親父!」
なのでつい、いつもの調子で親父を床に叩き付け、背中を踏んでしまった。
「ぐえっ!?」
「…若様、お気持ちはよく分かりますが、ここは会社ですので」
「あっああ、すまない」
梢さんの苦笑を見て、オレは足を外した。
「あいたた…。相変わらず元気だね」
すでに五十を過ぎている親父は、ブランドのスーツに身を包み、外見だけは!立派な会社の社長だった。
見た目も子供の欲目を抜いても、良い方だろう。
実際、親父と街中を歩くと女性が良く振り返る。
…くそっ!
「テメーがしっかりしないからだろう? 少しは社長らしくしやがれ!」
なのでついイライラしてしまう。
「まあまあ。若様、とりあえずソファーにお座りください。今、お茶を持ってまいります」
「ああ、頼む」
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