目覚めの脆さ

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「でも、私、結婚してるのに……。仁のこと大切だと思ってたはずなのに……。あんな手段を使ってまで仁との暮らしを望んだほど、好きだったはずなのに……」 「結婚とか夫婦のあれこれは、独身の私にはあまり分からないけどさ。アオイの仁君への気持ちは愛じゃなく占有欲だったのかもしれないね。今思うとさ」 「玲奈(れな)と付き合ってたのを引き裂いてしまったのに?」 「だからだよ。玲奈ちゃんの彼氏じゃなかったら、アオイは仁君に関心を持たなかったかもしれない。心理学的に証明されてるんだよ。好意的に見ている友達の持ちものは無条件に良く見える。〝持ちもの〟には人間関係も含まれる。人をモノ扱いするなんて、言い方は悪いけどね」 「そんな……」 「ごめんね、無神経な言い方だった。私の悪い癖だよ」 「ううん。真琴は悪くないよ。本当にその通りかもしれないと思って……」  小学校からの親友、玲奈のことが大好きだった。家族が不在がちの家で寂しい思いをしても、玲奈がよく遊びに誘ってくれたのでアオイは明るい気持ちになれた。  大人になった自分なんて想像すらできなかった幼い頃から、玲奈とは永遠に友達なのだろうと思っていた。実際二人の友情は長く続いた。高校と大学が別になっても、まるで同じ学校に通う者同士のようにしょっちゅう会っていた。
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