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良くも悪くも異性の人気を集め交際経験を重ねるアオイと違い、玲奈は奥手なタイプだった。好きな人ができても話しかけることができず片想いで終わっていく。
そんな玲奈に彼氏ができたのは大学生になってすぐだった。同じ大学で仲良くなり積極的にアプローチしてきた仁と交際することになったと、照れ笑いを浮かべて報告してくれた。
幸せそうにしている玲奈を祝福した。それと同時に感じたのは、親友を取られてしまったという感覚。そのうち仁は、アオイが知らない玲奈のことを知っているようになった。自分は何人もの男性と付き合ってきた癖に玲奈に独占欲を持つのはおかしいのかもしれないが、それがアオイの正直な気持ちだった。
弱っている時に励まされたことで仁を好きになってしまった頃、玲奈が話す仁の話題を敏感に拾うようになった。二人は大学を卒業したら結婚したいと考えていたが、それも無理かもしれないとのことだった。仁の実家には多額の借金があったのだ。
生活苦を理由に父親は仁が高校生の頃に蒸発。母親もアルコール中毒の末に病で倒れ働けない体になってしまった。借金は仁が肩代わりしないといけなくなるとのことだった。法律上、仁が両親の借金を返す義務はないが、心情的に彼は親を見放すことはできなかったのである。
互いの親にはすでに挨拶ずみだが、玲奈の両親は玲奈と仁の結婚に強く反対した。借金を抱えた男と結婚しても苦労するのが目に見えている。
それでも玲奈は仁と別れたくないと主張した。仁も同じ気持ちのようだった。玲奈には絶対苦労させないから結婚したいと懇願する。
アオイは思った。仁を手に入れるまたとない機会がやってきた、と。
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