遮られた決意

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遮られた決意

 アオイがマサを避けるようになって数日が経った。先の見えない現状にモヤモヤが募る一方、カフェの経営は順調だった。毎月新メニューを追加しているのが功を奏したのか、じょじょに客の数は増えている。  最近バイトに来たばかりの真琴もすぐ仕事に慣れ、アオイが所用で店を開ける時も彼女がスムーズに店を回してくれるのでとても助かっている。プライベートでは親友、職場では良きパートナーだ。  アオイと真琴、二人だけのシフトになった平日の昼下がり。客がいなくなると、話題は自然と恋愛に関する雑談になった。 「そういえば、最近、(ひとし)君元気?」 「うん。仕事にも慣れてきたみたいで、前より余裕があるっていうか、最近優しいんだ。ちょっと安心した」  言葉とは裏腹にアオイの横顔には寂しさが浮かんでいた。 「そのわりには浮かない顔してる」 「なんでかな。望み通り優しくしてもらえるようになって嬉しいんだよ。嬉しんだけど、全面的に喜べない。一瞬でもマサに気持ちがいっちゃったっていう後ろめたさがあるから……」 「本当にそれだけ?」 「それだけだよっ」 「昨日からマサ君バイト入ってないもんね。寂しい?」 「もう、またそんなことを。違うからっ」  ただ話題にマサの名前が出るだけで胸が喜んでいるのが分かった。たとえ親友との会話でも積極的に口に出したらいけない名前なのに、どこかでこの流れを期待していた。
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