30人が本棚に入れています
本棚に追加
「すごいな。若いのに店持って、仕事もバリバリやってて。そういう子、周りにいなかったからよけい気になる」
「物珍しいってことかな」
「まあ多少はね。でも、それだけじゃないよ」
イクトは前のめりになってアオイを見つめた。
「あれからずっとアオイちゃんのこと考えてた。マサなんかやめて俺と付き合ってよ。俺は絶対浮気しない。アオイちゃんのこと、ずっと大切にするから」
やはりと言うべきか、思った通りの展開になってしまった。だからイクトとは会いたくなかった。告白に揺らぐことなく、アオイは毅然と断った。
「それはできない」
「そんなにマサがいい? アイツ、今は一途でもいつまた浮気するか分からないヤツだよ」
「……指輪、返してくれる?」
ただまっすぐ、冷静な面持ちでそれだけ告げるアオイにイクトは気圧され、おずおず拳を差し出した。中には、海イベントで亡くしたアオイの結婚指輪が握られていた。
「ありがとう。あれからものすごく探し回ったの。大切な物だから見つかってすごく嬉しい。お礼にここは私に払わせてね」
「そんなの別にいいよ」
「そういうわけにいかない。これは結婚指輪なの」
「え!? け、結婚!?」
イクトは目を白黒させた。
最初のコメントを投稿しよう!