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「えっと、結婚って、マサと? 学生結婚? なくはないと思うけど周りにいないからビックリっていうか……。でも驚いた」
「ううん。相手はマサじゃないよ。マサとはただの仕事仲間。付き合ってないの。海の時は嘘ついてた。騙してごめんね」
「そうなの? 結婚してるのに、何でわざわざそんなこと……?」
「あの日、彼女のフリをすることでマサを守りたかった。店長として」
飲み物が運ばれてきた。アオイはそれをひと口だけ飲み、改めて言った。
「全ては二人の問題で、外野の私には口出す権利はない。それでも一つだけ言わせてほしい。イクト君とマサがこれ以上ぶつからずにいてくれたら私は嬉しい。私にとってマサは大事な従業員だから。お願いします」
「アオイちゃん……」
テーブルに顔がついてしまいそうなほど深々と頭を下げるアオイを見て、イクトは動揺した。アオイが既婚者であるという告白がすんなり頭に入ってこないし、かと思えば必死にマサを庇う姿も腑に落ちない。
こちらは何と答えればいいのだろう。分かったと言えばいいのか、嫌だと抵抗するべきか。
しばらくしてひねり出した言葉は。
「店長として言ってるわりには、マサに肩入れしすぎな気がする。アオイちゃん、本当に結婚してるの?」
「……うん」
「ひどいこと言ってごめん。アオイちゃんは魅力的だけど、だからこそ正直ショックで、今けっこう混乱してて……。マサと付き合ってるの、嘘だったなんて思わなかったから。マサのあんな顔、初めて見たし。認めたくないけど、アイツが本気で選んだ彼女なんだなって」
アオイは衝撃を受けた。
初対面同然のイクトから見てもマサと自分は自然な恋人同士に映っていたということに。
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