苦手意識と後悔

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苦手意識と後悔

 ……身を焦がすほどの恋ってどんなもんなんだろな。  今年の春、現役合格で大学生になったマサは、夏休み限定で始めたバイト先のカフェカウンターで皿洗いをしつつ客席を眺め、そんなことをぼんやり考えていた。  近くにいくつかの高校や大学が集まっているせいか、商業施設の合間に位置するこのカフェの客層は若者メインで、うちほとんどが十代から二十代の男女客で占められている。  時折社会人と思しきスーツの男や、ごく稀に老夫婦なども足を運んでくれるがたいていが一見の客で、そういった人々は二度来店することはない。  当然だが老いを体験したことのない明朗快活な雰囲気や後先を考えない軽いノリ、無謀さ、時には悩み相談などしあっている女子同士の情緒不安定さとおおげさなほど高らかな同情の声。若者達の放つ独特の、それでいて中年以降にはあまり見られない空気感が、ある程度落ち着きを得た年齢層の男女を遠ざけているようだった。  女性店長を務めるアオイは出勤するたびそのことを嘆いており、幅広い客層に利用してもらえるようメニューも考案してきたそうだが、単なるアルバイトのマサにとって店長の悩みなどどうでもよかった。  「店長って年上だけどそう感じさせない柔らかさがあるっていうか。同じ目線で話してくれるし、忙しい時でもピリピリしないで接してくれるから好き~」などと言われ他数名のアルバイター達には人気の高い店長だが、マサだけは初対面の頃からどうにもアオイを受け付けられず苦手に感じていた。  明確な理由はこれといってない。嫌味を言われたり怒り任せに八つ当たりされたりこちらの仕事を無視するような業務命令を下されたりもしていない。
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