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「岡田さん。ドキドキしてる」
「は?」
「岡田さんの背中から、ドキドキが伝わってくるんです。岡田さんも、俺のドキドキ、感じてください」
「……速いな」
「冗談でも遊びでもありません。好き、なんです」
ああ。言ってしまった。期待と後悔が、胸の内で盛大にシャッフルされて余計にドキドキした。
「……離婚歴があるんだ」
「えっ?」
不意の話題に、一瞬混乱する。
「お前は……俺を、捨てないか?」
岡田さんの胸の前で抱き締める俺の腕に、躊躇いがちに細い指がかかった。
「捨てるなんて! 一生、幸せにします!!」
「……帰るぞ。俺の家に」
ドキドキしっぱなしなのに、岡田さんはうるさそうに俺の腕を振り解く。向き直って、岡田さんはチラリと一度だけ、目を合わせてくれた。
「それなら、良いだろう」
「は……はいっ!」
桜色の唇に。触れることが出来た。一生、幸せにします。
もうあのメロディーが、恨めしく聞こえることはない。代わりに、今日の日の記念歌のように、胸を温めることだろう。
End.
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