迷子のおばあさん

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迷子のおばあさん

「おかしいわねぇ……。なんで私はこんなところを歩いているのかしら?」  おばあさんは、だれにともなく、ひとりごとをつぶやきました。  スーパーへ買い物に行く途中、街の中を歩いていたおばあさんは、ふと気がつくと、うっそうとおいしげった森の中に迷い込んでいたのです。 「考えごとして、歩いていたせいかしらね~。全然思い出せないわ」  おばあさんは、自分が迷子になる前のことを思い出そうと、必死になって目をつぶりました。  そして目を開けたとき、すぐ目の前に、一軒の古びたほったて小屋があることに気がついたのです。  小さな丸太小屋です。その玄関には、太くゆがんだ字で 『靴 マルオ』  とだけ書かれた小さな看板があります。 「オンボロだけど、まあちょうどいいわ、ここで道をたずねてみましょう」  おばあさんはそういうと、その小屋の中に入ってみることにしました。  おばあさんは、ぶあつい木の扉を、ゆっくりと開けました。  真っ暗な小屋の中は、しーんと静まりかえって人の気配がしません。 「もうつぶれている店かな?」  おばあさんが大声でつぶやいた、そのときです。 「いらっしゃ~い……」
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