4人が本棚に入れています
本棚に追加
迷子のおばあさん
「おかしいわねぇ……。なんで私はこんなところを歩いているのかしら?」
おばあさんは、だれにともなく、ひとりごとをつぶやきました。
スーパーへ買い物に行く途中、街の中を歩いていたおばあさんは、ふと気がつくと、うっそうとおいしげった森の中に迷い込んでいたのです。
「考えごとして、歩いていたせいかしらね~。全然思い出せないわ」
おばあさんは、自分が迷子になる前のことを思い出そうと、必死になって目をつぶりました。
そして目を開けたとき、すぐ目の前に、一軒の古びたほったて小屋があることに気がついたのです。
小さな丸太小屋です。その玄関には、太くゆがんだ字で
『靴 マルオ』
とだけ書かれた小さな看板があります。
「オンボロだけど、まあちょうどいいわ、ここで道をたずねてみましょう」
おばあさんはそういうと、その小屋の中に入ってみることにしました。
おばあさんは、ぶあつい木の扉を、ゆっくりと開けました。
真っ暗な小屋の中は、しーんと静まりかえって人の気配がしません。
「もうつぶれている店かな?」
おばあさんが大声でつぶやいた、そのときです。
「いらっしゃ~い……」
最初のコメントを投稿しよう!