迷子のおばあさん

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 お店の奥から低い声がしたので、おばあさんはびっくりして心臓が止まるかと思いました。  見ると、チョビヒゲを生やし、よれよれのエプロンをつけて、おばあさんと同じくらいの背の高さをしたはげ頭のおじさんが、不気味な笑みをうかべながら立っていたのです。 「ひっひっひ……このお店にお客さんが来たのは、あなたがはじめてですよ……」  おじさんは、右手に一本のろうそくを持ち、もう片方の手にあるマッチで火をつけると、こういいました。 「ふだんはうす暗いままにしているんでね……」  おばあさんは、少し明るくなったお店の棚にならぶ数々のくつを見て、あっけにとられました。 「なんだか、おかしな形のくつばっかりおいてありますねえ」 「良かったらはいてみてくださいな」  そこでおばあさんは、ためしに、トウガラシのように先がとがっている赤いくつをはいてみることにしました。 「ほうほう、なかなか面白いくつね。でも、ちょっと大きいみたい……」 「お気をつけてくださいよ、だんだんときつくなっていきますから」 「は?」  おじさんが言い終わらないうちに、おばあさんがはいているそのくつは、みるみるうちにちぢんでいったのです。     
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