招かれざる客

3/5
前へ
/12ページ
次へ
 おばあさんは、転ばないように必死でバランスをとりながら、さけぶようにいいました。おじさんは、耳のあたりをぽりぽりかきながらこたえました。 「そのくつは『へんくつ』といって、くつをはく人が止まると動いて、歩き出そうとすると止まり、くつをぬごうとすると固くなって抵抗するのです」  おばあさんはそれをきいて、こんなくつを売っているおじさんのほうが、このくつよりもよっぽど偏屈だと思いました。 「これをぬぐにはどうすればいいの?」 「思いっきりジャンプしてみてください」  おばあさんがぴょんと飛びあがると、くつはすぐに動きを止め、両足とも足からぬけました。 「せっかく見た目はいいのに、使いにくいくつばかりねえ」  おばあさんは、あきれたようにそういいました。 「うむ、なら、こんなくつはどうでしょう?」  おじさんが手にして見せたのは、表面に丸いぶつぶつが山のようについた、赤茶色のブーツでした。 「タコの足のようで、かわいいでしょ。『ブツブーツ』というブーツで、とっても丈夫ですよ」  おばあさんはそれをみると、ぞっとして肩をふるわせました。 「きゃー、私は、そういうぶつぶつしたのが大の苦手なのよ」  それをきいて、おじさんは顔をしかめると、おばあさんをにらみつけるようにしていいました。     
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加