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おばあさんは、転ばないように必死でバランスをとりながら、さけぶようにいいました。おじさんは、耳のあたりをぽりぽりかきながらこたえました。
「そのくつは『へんくつ』といって、くつをはく人が止まると動いて、歩き出そうとすると止まり、くつをぬごうとすると固くなって抵抗するのです」
おばあさんはそれをきいて、こんなくつを売っているおじさんのほうが、このくつよりもよっぽど偏屈だと思いました。
「これをぬぐにはどうすればいいの?」
「思いっきりジャンプしてみてください」
おばあさんがぴょんと飛びあがると、くつはすぐに動きを止め、両足とも足からぬけました。
「せっかく見た目はいいのに、使いにくいくつばかりねえ」
おばあさんは、あきれたようにそういいました。
「うむ、なら、こんなくつはどうでしょう?」
おじさんが手にして見せたのは、表面に丸いぶつぶつが山のようについた、赤茶色のブーツでした。
「タコの足のようで、かわいいでしょ。『ブツブーツ』というブーツで、とっても丈夫ですよ」
おばあさんはそれをみると、ぞっとして肩をふるわせました。
「きゃー、私は、そういうぶつぶつしたのが大の苦手なのよ」
それをきいて、おじさんは顔をしかめると、おばあさんをにらみつけるようにしていいました。
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