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懐中電灯で足元を照らしながら、しげみをかきわけ歩いていると、「ホー、ホー」とフクロウのなく声がきこえはじめた。
こんな森の中にもフクロウがいるのか……。
ボーッとした頭でそう思ったとき、足もとを何かが横切った。
何かが行った方向に目を向けると、それはなんと、海のタコだった。
「森にタコ!? そんなバカな……」
そのとき、タコがこっちに顔を向けて口をきいたのだ。
「ここは森の森だよ」
タコの言葉をきいたのは、後にも先にもこれっきりだった。
「なんだって? あ、ちょっと……」
おじさんは、おどろいて声をかけたが、タコはさっさと八本足で、とことこ歩いて行ってしまった。
気がつくと、いつのまにか夜が明けていた。
それからおじさんは、道具箱に入れてあった工具を使い、木を切って小屋をたてはじめた。自分でもびっくりするほど、夢のように作業は順調に進んでいった。
最後に、油性のマジックペンで『靴 マルオ』と書かれた看板をはっつけた。
こうして、森の中のそのまた奥に、だれも知らない小さなくつ屋が、ひっそりと開店した。
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