【 変化 】

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 フェリスの屋敷には狩猟用の大型犬が四頭いる。体高が高く滑らかな体形で毛足が長く、どの子も穏やかな性格ではしゃぐのが大好き、誰にでも愛想よくするけれども、主人の命令にはきっちり従う賢い子達でダンヴァーズ家の家族全員、随分可愛がっている。アランの行動を見てるとそんな飼い犬の行動を思い出すらしい。 「犬ってなんだよ?バカにすんな!」 「可愛いって言ってんだから、素直に喜べば?」 「バッカ、可愛いって言われても嬉しいわけねぇだろッ」  今更凄んでも遅い。よしよし、いい子だねーと猫なで声で頭を撫でられて怒っているが、確かに行動が犬っぽい。じゃあ、自分が飼い主になるのかな?なんとなく、フェリスを真似てアランの頭を撫でてみた。今度は噛み付かず、大人しくされるがままになっている。 「そういうとこだって」  ボソッと呟くフェリスの声はアランの耳には届かなかったようで、ふんぞり返って椅子に座って回りに目配せしてるものの、頭を撫でられてるという、変な光景になっていた。 「アラン!そんなとこで油売ってんな!」  マストからスルスルっと下りてきたセージに見咎められた。 「もうすぐ島見えんぞ。こっから先、どうすんだ?」  目的地が近づいてきた。  もうすぐ、この船とも仲間ともアランともお別れだ。 「どうする?」  三人から離れた位置で腕を組んで立っていたローランドにアランが問う。 「真っ直ぐ港に着けてくれる?俺らが海賊船から解放されたって瞬間を多勢に目撃させたいんだ」     
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