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海賊船から直接相手国に降り立ち、注目を集めた上で皇帝と接見する。これならナザニエル帝国に潜りこんでいるだろう刺客も手を出し辛いと判断したようだ。
「だってさ。俺らの船の威力、見せてやろうぜ」
「分かった。じゃ、サイネス、いっちょ頼むわ」
「任せとけ」
帆を操るのはセージの役目、港につける舵を取るのはサイネスの役目。
それぞれが持ち場につき、アランも海賊船の船長らしい格好へと着替えた。
大きな羽根飾りがついた鍔の広い帽子、長く黒いマントを靡かせ、腰には大きな目立つ剣。目深にかぶった帽子から半眼を覗かせ、顎を逸らせる様はさっきまでの陽気な男ではなく、不敵で不気味に見せる。
船にはドクロマークが染め抜かれた旗も掲げられた。甲板には屈強な身体つきをした船員達のみが姿を現し、歳若い者や線の細い身体つきの者は裏方へと回る。全ては『月夜の狼団』による演出だ。
港が近づいてくるとアランが舳先に腕を組んで立ち、その後ろにカイル達も並んで立った。
ああ見えてサイネスはそこそこの腕前らしく、わざと大きな波を立てて港に船を着けた。突然の高波に慌てふためく港の人々に高らかにベルリング王国のローランド王子とその家臣を解放すると宣言した。
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