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一瞬、静まり返った港が再びざわめき、聴衆の中の数人がどこかへ駆け出して行く。役人に報せに行ったのだろう。彼らが駆けて行く方向を見定め、アランもセージも満足そうに口許を緩めていた。
暫くすると港にいた群衆とは明らかに違う服装をした小太りの男が沿岸警備隊らしい制服に帯剣した数人の男を引き連れて来た。集団が群衆をかき分け、港の先に辿り着いたのを見届けてから梯子を下ろす。
「―――カイル!」
船から梯子で降りるローランドとフェリスに続いて降りようとしたカイルだったが、アランに呼び止められ、腕を引っ張られた。
耳元で囁かれた言葉に呆然としてると、軽く突き放された。
「じゃあな」
ニッと口の端だけを吊り上げ、仕草だけで下船しろと命令された。
聞き返すことも出来ず、本当だろうか?と疑いつつ、港に降り立つ。沿岸警備隊が到着するや否や、自慢の馬力をフル出力した海賊船は港からあっという間に離れて行った。呆気にとられたのは港に集まった群衆や沿岸警備隊だけでなく、カイル達もだった。
海賊の脅威が去ってから、声をかけられた。
「ローランド王子ですか?私はこの港を管理しております、ジャン=クロードと申します」
腰を折り、頭を下げる役人に、ローランドは一国の王子らしい穏やかな笑みを浮かべる。
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