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カナの告白
「出会いは出会い喫茶だったけど、二人は愛し合った」
「―――みんなにはナンパされたといってたけどね」
「デイトレーダーみたいにパソコン画面に食い入って12分割されたモニターから、わたしを選んでくれた」
「迷い込んだわたしをダイヤモンドが落ちてたといってくれたね」
遠距離恋愛で別れて1年半、さみしさのあまりデートクラブに登録したわたし。
食事デート限定のわたしにあなたは優しくしてくれた。
お遊び専門よりレンタル彼女みたいなわたしを気に入ってくれた。
最初は飯だけ女を口説く醍醐味みたいな感じだったのかもしれないけど。
本物の彼女になるには時間がかからなかった。
あなたはホントは既婚者だったけど、もう離れなくなってから打ち明けて
最後は責任とって一緒になってくれたね。
わたしを一番笑わせてくれたね。
魂のこもった笑い話をよく聞かせてくれたね。
石川から出てきたわたしには大阪の人の笑いに対する情熱が新鮮でまぶしかった。
北陸美人だと、色の白さを褒めてくれたね。
ただただルーティンのおしゃべりが楽しかった。
そういえば、ZARDの『永遠』をわたしによく歌わせたね。
「それでも100歳まで、愛してくれたから、永遠の愛と呼んでいいよね」
☆☆☆
深夜、85歳の老女がベッドで寝ている夫である齢100にしてたったいまこの世を去った老人にひたすら語りかけている。
夢を見ているように、かつて、笑いのカイザーといわれた老人が笑ってみえた。
机の上には辞世の句が置かれていた。
『出会いから 寝ても覚めても 君思ふ 揺れる心は 大阪の夜』
それを見た老女は呟いた。
「ごめんね‥ほんとはわたしもお遊びもOKの女だったのよ。。」
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