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笑えないプレゼント
布団のはがされたこたつ机の上に宛て名なしのA4茶封筒が載せられている。しかも何なのか分からない染みがある。醤油のように見えなくもない。俺はその茶封筒に視線を落としながら、その前で胡坐を組んでいた。
こいつは一体何なのだろう。
いつものように会社から帰ってきて、郵便受けを覗き込んだ俺の目に飛び込んできたのは、これではなかった。携帯の明細やショップのハガキ、手入れの紙切れなどが先に目に入り、手の中でシャッフルされていたのだ。いつもなら、玄関に入ってからするこの行動を、この日に限ってポストの前でしてしまったのだ。そして、茶封筒の上にはこれらダイレクトメールの数々がいつものように投函されており、郵便受けの一番下にへしゃがってせせこましそうに角を崩していたのがこれだった。
だから、実際いつからここにへしゃがっていたのか定かではない。
首を傾げ、郵便受けから引きはがすようにして取り出した茶色いその封筒の底の方には、かまぼこ板を少し大きくしたような物が入っていた。
最初は何も気にしなかった。何故かって、宛て名なしだとは思っていなかった訳だし、腹も減っていた訳だし。これでも一人暮らし5年目なのだ。間違い郵便も引っ越し当初はあったが、今では全くないくらいの歳月だ。そして、今流行の男飯なんてものくらいなら、ちゃちゃっと作ってしまえるくらいにはなっている。冷蔵庫を覗くとしらすに味付け海苔、長芋があった。
よし、これでどんぶりにしてやろう。残念ながらご飯はレンジでチンだが、結構なごちそうになるはず。
頭の中はそれだけになったのだ。長芋を擦って、ご飯にかけて、味付け海苔にしらすをまぶす。
どんぶりを作り終え、最後に醤油を少し垂らす。テレビのスイッチを入れ、バラエティーを探す。くだらないことで笑いながら、どんぶりを頬張り終えると、件の封筒が俺を呼んでいるように思えた。
つまみあげるとかまぼこ板が滑り落ちてきた。
テレビからの馬鹿笑いが遠くなった気がした。もともと、テレビの世界は遠いのだけれど、さっきまで一緒に馬鹿笑いしていたはずなのに、全く笑えなくなったのだ。
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