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「まさか、本当に来るなんて…。」
「入って良い?」
「え? あ、ゴメン。」
玄関をふさぐように立っていた黎は端に
寄った。浩也がパリから来たことを信じ
られない黎をよそに、彼は勝手に靴を
脱いで上がり込んだ。黎は浩也を追い
かけた。
「ねえ、何で?」
「何でって言われても。理由が必要?」
浩也は腰を覆う丈の黒のコートを脱いで
背もたれにかけた。彼は生成りのアラン
セーターに黒というには若干薄い墨色の
ようなパンツを合わせていた。コートの
形に黎は見覚えがあった。
「そのコート、AZUL HOMMEのよね。」
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