第二章 家族

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 「直樹さんのためにお金を貯めていたんですよね、その息子さんが消えたのに、なんでそんだけ冷静でいられるんですか?」  「そりゃ、わたしもリセットされちゃうからよ、これは意外だったけど、あなたは孝典と結婚しないという未来を選んだ以上、未来のわたしに文句を言う権利はないの。すべてを受け入れるしかない。そうでなくても、四十六歳からのわたしの人生は三雲親子にふりまわされてばかりだった。だから過去のあなたが三雲親子の人生に干渉する以上、わたしという存在も消えることになる。息子がいようがいまいが関係ないわ」  「わあ、むずかしくて頭が痛い!」  「へへへへ、ムリもないわね、自分が幻のようなものだって運命を受け入れるまで、この歳まで生きなきゃ覚悟なんかできなかった。小娘にわかってたまるもんですか、さて、それじゃ悪友のダイイングメッセージでも一緒に観ようかね」  「え? ダイイングメッセージ?」  「その前にチャッチャッとコーヒー淹れるから」 と、再び台所に堀越は立った。  そのあいだ暇なので、部屋の中を観察していると、ゴミ箱の中に薬を入れた紙袋が捨ててあった。
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