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なんせ、ふだん目にするのが、のどかな田園風景なのだ。
美樹はスポットライトやミラーボールよりも、下校の途中、田んぼの水に映った朱色の夕日をながめるのが好きだった。
鉄塔が並ぶ道路の向こうにはあぜ道が続き、青く育った無数の稲穂がそよ風に揺れる。
この街に住んでいれば、ごく普通に目にする風景だが、美樹にとって、これが故郷で、どこにでもあるありふれた景色に愛着を感じていた。
「噂じゃ、もうすぐ、この田んぼも開発でなくなるっていうけど……。やだな」
そう美樹は呟いた。
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