ラノベでいいの?

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さて、その日――彼女はついていなかった。  油断大敵で、塾に入るなり、たまたまロビーにいた歴史、地理の講師、堀越(ほりこし)秀美(ひでみ)がいたのだ。  堀越は父親と同じく四十代後半になる女講師で、「厳しい受験戦争はファッションなんかにかまけていたら勝ち抜けないよ」と、受講生にハッパをかけるので、自由すぎる美樹のような高校生には頭が痛い存在だった。  堀越は黒髪が自慢のロングヘヤーをなびかせながら、美樹の服装をチェックすると、ギラリと黒縁メガネを光らせた。  「そこ! スカート! 短すぎ! 坂下さん! あなたのダイコン足なんか、だれも期待していないから!」と、注意され、(くそお! 気にしてることを!)と、思わず美樹は歯ぎしりした。  生活指導部並みに厳しい彼女の方針に、だれも面と向かって文句は言えない。相手は塾生の点数が確実にアップしていくカリスマ講師で、美樹にしても、中学、高校の担任なんかより恩義がある。中学時代から世話になっているが、今の高校へ入学できたのは堀越のおかげだと感謝しているくらいだ。
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