第一章 出発

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 見るもの聞くもの、すべてが珍しい。  「お義母さん、大好物のリンゴです」と、岩井が盆に皮をむいたリンゴを乗せた皿を台所から運んできた。  「わあ! リンゴ! 岩井さん、わかってるぅ~!」  美樹にとって、これはお守り代わりだ。  幼児期のとき、彼女は風邪を引くと母親が必ずリンゴジュースを作ってくれたので、それからリンゴが大好きになり、夜店では必ずリンゴ飴を買うくらいだ。  夢占いでもリンゴは実を結ぶことや知恵を授かるなど、よい意味が満載で、これを知ってから、ますます好きになり、いわば美樹のラッキーアイテムと化していた。  よって、美樹は満面の笑顔で「縁起がいいわぁ~!」と、猛然とリンゴを頬張った。  それからはゲーム三昧、美樹は未来のゲーム機に夢中になった。  「なにこれ画面が綺麗! やっぱり進んでる~」と、ポケモンに熱中していたら、岩井が話しかけてきた。  「どうです、二〇一九年は?」  「いやぁ、すごいね、自動車はいかにも未来車という感じだし、音が静かだわ、時々エンジン音がしたりするけど?」
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