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そのとき、いきなりチャイムが鳴った。
時間はもう九時を回ってる。
続いて、ドアが開く音が聞こえた。
「あれ? ここには岩井さんしか住んでないんじゃないの?」
「あ! それは、その、いろいろ……」
説明されなくても、子供にだってわかる。一人暮らしの女性の部屋の鍵を持つ人間といえば、恋人と相場は決まっているのだ。
「まさか痴話ゲンカ?」
岩井が慌てて立ち上がったところで、二十歳くらいの青年が玄関のドアを開けて入ってきた。とても服装が野暮ったい。デニムのズボンにデニムの上着、それに漢字で《達人》と書かれた黄色いTシャツを着ていた。
ダサい。あまりにダサいファッションセンスだ。
(まさかオタク? ダメだ~、生理的にダメなタイプだ!)と、思っていたら、かれはリビングでテレビゲームを楽しんでいる美樹を見るなり叫んだ。
「かあさん! しんじられない! ほんとうにつれてきたのか!」
「なんで、ここへきたの、すべて台無しにする気!」と、岩井は青年を責めたが、「当たり前だろう、おれの母親だぞ! それをタイムスリップでつれてくるなんて強引過ぎるだろうが!」と、かれは言い返した。
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