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「あれはハイブ……。あ! ノーコメントです」
「またそれぇ~」
「そ、それより音楽はどうですか?」
「そうよね、音楽はテクノポップばかりだと思っていたら、あんまり一九八〇年とかわらない気がしたよ。ラップもヒップホップも普通にあるし」と、美樹は笑った。
そのあと「2020年に東京でオリンピックあるんだよね、今から楽しみ、楽しみ!」と、言った途端、 岩井は「ゲゲッ!」と、美樹のような声をだした。
「な、なぜそれを!」
「だって、街中に紺地の輪っかみたいなマークがあちこちにあったじゃんか、その下に2020年、オリンピックと書いてあったもん。どんなバカでも気づくよ」
「ううっ!」
岩井は真っ青だ。
「な、なによ、そんな重大な問題じゃないでしょう? わたしがオリンピック選手になれるわけないでしょうが、こっちは一九八九年なんだよ、その頃だったら四十七歳だって、なーんにもできないよ、アハハハハ!」
呑気に笑う美樹だが、それは違っていた。
東京オリンピックを事前に知るだけで時代は変わってしまうのだ。たとえばコンクリートやオリンピックの施設を建設する会社の株を底値で買えば大儲けが約束されたようなもの――
(今は子供だから無邪気に笑っているけど、大人になれば、きっとやらかす)と、心配する岩井だった。
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