追憶と現実

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次に雪野に会えたのは成人式 綺麗に上げた髪に振袖がよく似合って思わず見とれてしまった 声を掛けよう、今回は顔を背けられたりしない、きっと…大丈夫だ 自分に言い聞かせ、胸の鼓動を抑えながら雪野に近づいた時、雪野を取り巻く輪の中から品の無い声が聞こえた 「雪野彼氏いるんだー、俺狙おうと思ってたのに残念!!」 その瞬間、俺の足はまたしてもぴたりと止まってしまった そうだよな…雪野みたいな女、他の奴が放っておくはずがない 固まったまま小さなため息が漏れる 俺はまたしてもチャンスを生かせなかった 恋愛はタイミングだ なんて話を聞くけれど、案外そうなのかもしれない 固まった体を動かそうとした時、雪野と目が合った 今回もまた即座に顔を背けられたが…それでよかったって事にしよう ははっ…と自虐的に笑うと、楽しそうに笑う雪野を横目に背を向けた
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