追憶と現実

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混雑する駅の改札口、もしかしたら彼女に…なんて淡い期待を持ち、辺りを見回しながら人の波に乗って歩く 会えるとしたらここ 過去に何度かすれ違った けれど、すれ違うだけ 追いかけようと振り返っても人の波に飲まれて消えて行く 本当は会って話がしたい そして…触れたい けれど、出来ないのは分かっている だから…会いたい…一目でいい 会いたい …いつも、こんな事を思っては空振りばかり 一瞬すれ違えるのも年に一度あるか分からない そんな確率に固執するなんて馬鹿げた話だと笑ってしまう 今日も…ダメだな 自分の馬鹿さ加減を鼻で笑い飛ばしながら、改札口にカードを通した その時 すれ違いざま、前からやって来た女を見て足が止まった はっきりとした目鼻立ち、うなじが綺麗に見える髪、俺が斜め下を見れるくらいの背丈… 雪野!! 叫ぼうとしたが、急な事に声は出ず、向こうは改札から出るカードを目で追っている 振り返り、追いかけようとしたが、真後ろにいた大柄な男に嫌そうな顔をされ、慌てて出口に出たままのカードを取ると 人波をかき分けて隣の改札をくぐった
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