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ドライブ日和
「ウオォォォォォン」とけたたましい音を立てながら、一台の車が夜の山を登っていく。
その車はテールライトを左右に揺らし、ドリフト走行で曲がりくねった山道を進んでいく。
男は月に二回ほど、この山を車で走る。特に明日は何も用事がなく、男にとってはドライブ日和だった。
その日は他の車は少なく、前を走っていても男の車を見ると左右のウィンカーを点滅させ、道を譲ってくれた、男は気分が良くなり山を何周も走った。
そろそろ帰ろうか、そう考えた矢先、気の緩みからか、ハンドルの操作が一瞬遅れてしまった。
このままではガードレールにぶつかってしまう、男は慌ててブレーキを踏む、だが、車は止まらなかった……
男はがむしゃらにブレーキを踏むが、何度踏めど止まる気配はなく、踏んだ感触もない、男はおかしいと思い、目線を足に向けた。
男の足は、太ももから先が無かった。
その時男は思い出した、明日は本当に何も無いんだなと、明後日も、これから先も。
男と車はガードレールをすり抜け、車は崖下へと消えて行った。
「なあ、最近あの山、霊が出るの知ってる?」
「あー、知ってるよ、毎晩出て来て事故を起こした崖で消えるって話――」
男は今日も車で夜の山を走る……
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