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今年33歳になった三沢サトシは、東京都の北方の街でレイワ・コーポというマンションに住み、中央区にある早生田大学で事務の仕事をしていた。
彼の生活は、一つのカタチになっていて……
いつも出掛ける時は、ミカに、
「行ってきまーす」
『行ってらっしゃい、気をつけてねー』
彼女は笑顔で手を振る。
そして帰宅すると、ミカに、
「ただいまー」
『お帰りなさーい』
彼女は笑顔で抱き付いてきた。
ミカは(一応)29歳で、妻同然という感じの存在だった。
そして、2人にはソラという男の子がいた。
最初ミカは笑顔だったが、やがて……何故かオロオロし始めた。
どうやら原因はソラの事らしく、サトシが訊いても、なかなか返事をしなかった。
何回か訊くと、ようやく『実は……』と話した。
その内容は、ソラの部屋にあったモノで、『超仮想・恋愛大作戦』というシュミレーション・ゲームだった。
理想的な環境で仮想の女性と、仮想の恋愛を楽しむという内容だった。
ソラは、まだ小学生だが、こんなゲームを楽しむとは……と、ミカはショックだったようだ。
確かにゲームに登場する女性は、現実の女性より素直でチャーミングだ。
しかし、それだけに、ハマリすぎると現実の恋愛が出来なくなる者も、少なくないと聞く。
が、それは十八歳頃からの話で、ソラの年なら、それほど深刻な事態にはならないだろう……。
とりあえず、広い心で見守ろうと、サトシは思った。
ミカも、とりあえず納得したようだった。
そこでサトシは、ミカをじっくり見た。
大きな瞳がいつも輝いていて、実にチャーミングな女性だ。
最近は、町内会の役員に選ばれて、多忙な日々を送っている。
しかし、それでもソラの面倒はちゃんと見ていて、実に良く出来た女性だと、彼はつくずく思うのだった。
そんな家族でも、何処かに何かしら問題や悩みを抱えていたりする。
そんな時、必要なコミニュケーションを欠かさなければ、解決できない問題や悩みは無い……と彼は思っていた。
だからこそ、家族というものがあれば、心から大切にしなければならないのだ……とミカを見ながら思った。
あした休日で、今日は時間があるから、彼女とタップリ会話することにしよう……。
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