東の『花菱園』で…

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 ――と、その前に、食事をしたくなった。  正直な話、ミカに作ってくれるよう言いたいところだ。  が、ミカは残念ながら料理が出来ないので、サトシは『メニュー』をクリックして『Enter』キーを押した。  するとミカが、 「短縮する?」  と訊いてきた。  サトシは、『はい』を選択した。  これで、きょう1日のデーターを簡略化して残せるのだ。  ミカとソラが、 「じゃ、またねー」  と画面から消えてから、サトシは、パソコンの電源を落とした。  その部屋は、再び一人暮らしの静かな部屋に戻った。  サトシはキッチンに向かう。  以前、ミカからのアドバイスで買った『フルエネルギー食品のカレー』があったハズだ。  ご飯は、インスタント系商品で済ませる。  両方共、電子レンジで行ける。  ――2030年に入り……非婚・晩婚の流れは極限に達し、一生涯、結婚しない人の割合は、3人に1人を越える勢いとなっていた。  そして今や、この―― 『超仮想! イリュージョン家族大作戦』  というネットのサイトで楽しむことが、最も一般的な『家族』のカタチとなっていた。  が、だからといって「リアル家族」を諦めた訳ではなく、チャンスさえあれば……と思っている若者も少なくなかった。  例えばサトシも、その1人だった。  食後、再度パソコンを立ち上げると、サイトの画面に、 『サプライズ・プレゼント』  の表示が出てきて、 『お客様が、当サイトの利用を開始されてから10年が経ちました。 そこでお客様に、サプライズ・ブレゼントをご用意しました。 以下の用件に関しまして、『はい』『いいえ』でお答えください』  サトシは、その用件を読んで、 「へー……。そんな事が出来るとは……」  そして『はい』を選んだ。  すると画面に―― 『では、明日の午後3時に『花菱(ハナビシ)園』までお越しください』  ――明日は、休日だもんな――  やがてミカとソラが現れた。 『あなた、もう寝る?』 『パパ、遊ぼーよ』 「ちょっとお話しよう」
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