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ナナになった私
あの雨の日、私は猫になった…
そして、不思議な事に私から逃げた彼に拾われ、飼われている…
「もうキミと一緒にいられないんだ…
そもそも人と深く関わるのが苦手なんだ…
1人で考えたい…1人になりたいんだ…」
彼の口から何度この言葉を聞いたことだろう…仕事が忙しくなったり、予定が入るといつもそうだ…私との約束を忘れたり、連絡が減ったり、言い訳ばかりをならべ、私のせいや元々そういう人間なんだと開き直り、自分に余裕がないからと私を拒絶する。
いつもの事だとあの日の私は聞き流せなかった…嫌な事が重なり、体調も悪く、それこそ私の方が余裕がなかったから彼に拒絶されたくなかった…もっと側にいたかった…あと少し、もう少しだけ…と。
そんな願いも叶わず…彼は雨の中、私を車から下ろして走り去っていった。
そのあと私は意識がなくなり、目が覚めた時には下ろされたはずの令志の車に戻っていた…ただし、猫の姿で。
飼い主である令志は、何も気付いてない。
当然だ…私がどれだけ話しかけても、彼の耳に私の声は、ただの猫の鳴き声にしか聞こえないのだから…
どれだけ名前を呼びたくとも…
もう一度、きちんと話がしたくても…
またソファーでうたた寝して…
「起きて?シャワー浴びないと…」
その言葉は、ただの鳴き声としてミャーミャーと響く。
ナナは、令志の顔を優しくキスするかのように舐める。
「ん?くすぐったいよ…いつものように起こしてくれたのか…ナナ」目を擦りながら、令志は起き上がる。
「彼女と同じ名前にしちゃったせいかな…ナナは菜々みたいだな…どーせシャワー浴びないと!そんなとこで寝ちゃダメ!とかって言いたいんだろ??」令志は見上げる私の頭をポンポンとするとお風呂に向かった。
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