3人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ
あの雨の日…
お風呂から出てきた令志は、いつものように携帯片手にベットに横になる。
その横にピョンと飛び乗り、令志の横で丸くなるナナ。
「シャワー浴びてきたから温かいだろ♪ナナも今度一緒に入るか??猫のくせに俺が湯船につかってると入りたがるんだよな~お前は」そう微笑む令志に、ニャーと返事するナナ。
令志の匂い…令志の体温…大好きな腕枕
この姿なら側にいられる…
私はここにいたかっただけ…
あなたの側にいたかっただけ…
令志はあの日の夢を見た。
俺は、こうやって猫を抱くように3年付き合う彼女…葉月菜々(なな)を抱きしめて、あの日も寝れば良かったんだ…本当は…分かっていても、いつもの逃げ癖が出て彼女を拒絶した。
「今日、一緒に帰っても良い…?」恐る恐る聞いてきた菜々の言葉と怯えるような目から俺は逃げたんだ…
正直、めんどくさい…明日にして欲しい…来週にして欲しい…また今度で良いんじゃないか…いつもの事だと分かってくれるだろう…
そんな風に彼女に甘えてた。
逃げても許してくれる…彼女が我慢してると分かっているのに…分かっていて、俺は逃げた。顔色が悪かった事も気付いていたのに、雨の中、彼女を置き去りにして…最低だ。
自分のアパートの駐車場について、ふと菜々が座っていた助手席の方を見るとカギを見つけた。
「マジかよ…」急いでエンジンをかけて、彼女の家に向かう。まさか…あんな事になるなんて、思ってなかった。
さほど遠くない彼女を下ろした家の前に戻ると救急車が止まっていた。
胸騒ぎがする…怖くなって、電話をかけたが…出ない。
「嘘だろ…」サイレンを鳴らし、出ていこうとする救急車の後を俺は車で追いかけた…それに菜々が乗ってるかもしれない気がして…違ったら良いと思いながら病院に着いた。ドラマや漫画のように、駆け寄って確かめに行けない…怖くて車から下りられない。
頭の中で、どうせいつもの貧血だろう…大丈夫…今までだってあったんだし…俺が駆け寄ったって治せる訳じゃないんだし…下りられない自分に言い訳をならべる。
とことん俺は最低だ。
最初のコメントを投稿しよう!