君との日々

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僕が東京の大学に行く前、近くの砂浜で時間を忘れて語り合ったね。 語りつくすと僕らは何も言わずに、ただ海をみつめて 辺りが黄昏につつまれるまで座り込んでいた。 繰り返す波の音を聞くだけで、お互いの体温を手のひらに感じるだけで 僕らはなんて満ち足りていたのだろう。 僕の両親は、僕らがただ「若すぎる」というだけで反対していたが 僕らは決して諦めなかった。 僕は君以外考えられなかったし、君も僕を慕ってくれた。 大学を出て、直ぐに君と暮らすために就職をしたね。 そんな世間知らずの若造にろくな仕事もなく、 稼いだお金は、あっという間に生活費に消えて行った。 倉庫のような狭い部屋に、段ボール箱の机に食事を並べて それでも君はおままごとのように、にこにこと笑顔で 文句ひとつ言わずに、少ない食事を分け合ってくれた。 どんなに寒くても、お互いの腕の中は暖かかったね。 まともな結婚式すらしてあげられなかったけれど、 僕は君がいてくれることが、最上の日々だったんだ。
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